昨年の東京大会は本会創立45周年の記念となる大会でもありました。前身の「全国言語障害児をもつ親の会」としてスタートしたのが昭和49年です。
思い起こせば、公教育においてことばやきこえの指導がなされたのは、ちょうど今から60年前、仙台の通町小学校で浜崎健治先生が、それと時を同じくして千葉市川市の真間小学校で大熊喜代松先生が、現在のことばの教室の前身を始められました。仙台と千葉ではじめられたこの教育が、まだ制度も法律も何もないところで産声を上げたとき、その教室を支え、発展させ、現在につなげたのは、親たちであったのです。先生の呼び掛けにより、親の会ができ、現在に続く活動につなげられてきた、と言えると思います。この60年前から、子どもを真ん中にして、先生と親がいっしょになってこの教育を進めてきた、ということなのです。
初代会長は、小林咲子さんという千葉のお母さんでした。口蓋裂のお子さんをおもちのお母さんでした。20年ほど頑張られました。第二代は秋田の辻久視さんが6年、第三代は岩手の成田宏邦さんが6年、そして第4代を私が受けて12年になりました。
私たちの会はボランティアの会ではありますが、先輩方のご苦労や思いを次の代にきちんと受け渡していかねばならないと思います。交代にあたっては、新生NPOをなんとか軌道に乗せるということが私の使命という気持ちでした。今、それが目の前に見えてきたことで安心して新しい人たちに受け継ぎます。時代はたくさんの困難な要素に満ちていますが、どうか若い力でこの時代を乗り切っていただきたいと思っています。
今、国では精力的に「障がい者制度改革推進会議」による検討をはじめとし、障がいへの対応について大きな変革を進めているところです。「障害者権利条約」の批准にむけても準備が進められています。今後それらの新しい制度の導入にあたり、はじめは現場が少し混乱するかもしれません。日本の教育そのものが変わることになるかもしれません。その時、障がいを持つ子どもたちへの対応として、まずは地域の身近なところで第一義的な相談を受けて、というスタイルになると思いますが、それはまさにわれわれ親の会がこれまでずっとやってきた取組みにほかなりません。親の会の重要性が増す大変な時期に後をお願いすることになりますが、このようなときだからこそ、また大きく飛躍するチャンスもあります。親の会の趣旨をご認識いただき、どうぞ自信をもって立ち向かってください。どうぞよろしくお願いいたします。
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