V 親の会とそれを取りまく環境
2.京都大会と通級問題
平成元年度の全国ブロック長・会長会議は、辻会長、行木事務局長執行部の留任を決めました。そして第13回全国大会京都大会への取り組みと全難言協東京大会への協力、さらに通級制実現のため関係行政機関に積極的に働きかけることになりました。
京都大会は、大会実行委員長が京都府親の会西田幸子会長、事務局をはじめ主なスタッフも女性という、まさにお母さんパワーに支えられた手作りのユニークな全国大会でした。中心となった話題は、やはり臨教審の答申を受けての「教室が変わる」という期待と不安です。特に教室担当の先生方から「親の会の出番だ。頑張れ」という叱咤激励が多くありました。
なお、京都大会で表彰を受けた方は下記の方です。
○表彰楯受賞者
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京都府 滝野 軍治
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岐阜県 成木 博子
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愛媛県 原 小夜子
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千葉県 高安 和子
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大会終了後、京都大会の論議と成果を事務局は文部省(特殊教育課)に報告し、通級制度、幼児問題への取り組みを説明しました。
10月になって辻会長はブロック長を招集して文部省への請願を行いました。下記の請願書は文部政務次官・町村信孝衆議院議員と懇談し、直接手渡ししたものです。
小・中学校に設置されている言語治療教室特殊学級の通級に関する件
昭和33年、仙台市立通町小、学校に言語治療教室が設置され、次いで昭和34年、千葉市立院内小学校に設置されました。この創成期の2校の指導成果には、目をみはるものがあり、われわれ言語障害児をもつ親たちの喜びは大きく、言語障害児にとっては希望を与えられたものでした。その後、年々、全国各地に教室が設置されてまいりました。
これは、ひとえに文部省ならびに関係機関のご指導の賜物と感謝いたしております。
われわれ親の会は、「どこに住んでいても」「だれでも」「いつでも(適時に)」「一番よい指導を」念願して、各地域の中で運動をすすめてまいりました。親の会全国組織結成の昭和39年から現在まで実に25年間、ずっと願ってきたことは「通級を制度として認めてほしい」ということでした。
言語障害児は、障害の対象としては軽度の分野とされがちですが、将来の社会的な生活を考えるとき、コミュニケーションのため重要な言語という性質上、その治療教育に関する問題は、教育的方法としてきめ細かい指導上の配慮をすべきものと考えます。言語治療教室での指導は、通級方式という事でなされていましたが、ぜひ、通級制度による言語治療教室が実現するようにお願いするものであります。
平成元年10年27日 全国言語障害児をもつ親の会 会 長 辻 久視
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翌月11月17日に、さっそく町村文部政務次官から下記のような資料を添えて回答が届きました。
いわゆる「通級学級」について
軽度の心身障害児のうち言語障害、難聴、情緒障害等の障害のある児童・生徒については、各教科の授業は在籍する通常の学級で受けさせ、心身の障害の状態等に応じた指導(言語指導、聴能訓練、遊技療法等)を部分的、定期的に応じ特殊学級で行うことが教育上有意義であるとの考えから、小・中学校において「通級」と称して、このような指導が実態として広く行われている。この通級には、自校内の特殊学級へ通級「自校通級と、他校の特殊学級へ通級する「他校通級」の二つの形態がある。しかしながら、この「通級」には、教育課程上明確な位置付けがなく、また、教員定数の面でも、通級する特殊学級に在籍する児童・生徒がいなくなれば教員の定数措置ができないという問題がある。
この「通級学級」については、昭和62年4月の臨教審第3次答申や、昭和63年12月の盲学校、聾学校の教育課程の基準の改善についての教育課程審議会の答申において、その充実の必要性が指摘されているところでもあり、平成2年度予算概算要求においては、通級学級における指導の内容及び方法、教育課程上の位置付け等の諸問題を調査研究するため、調査研究協力者会議の設置や通級学級研究校の指定を行うべく、予算を要求している(要求額9,969千円)。
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