V 親の会とそれを取りまく環境
1.組織内アンケート調査
昭和63年5月に、全国親の会は各都道府県親の会に対してアンケート調査をしました。
(1)現在「親の会」として困っていること。
(2)各地の学校の中の「きこえ・ことばの教室」の実態。
(3)全国親の会への要望。
の3点について率直な意見と要望を求めました。
(1)については、
・会員になる若い親たちが、親の会に対して関心がうすい。
・教員の多くが、親の指導や親の会の必要性を感じていない。
・親の会OBと現会員との間に、活動や要望についての差がある。OBは子どもの社会的自立。現会員は通級のこと。
・行事に参加してよかったと思える内容の検討が課題。
・教室設置促進の活動から始まったが、親の会活動の柱とは何かがつかめない。
・教室設置がされても親の会が組織できない。仮にできても教室親の会であって、PTA的存在でしかない。
・発音、おくれ、口蓋裂、難聴などの障害別には学習し合っても全体としての連帯感がうすい。
・通級している子どもの親だけが会員になる傾向がある。会員の世代交替で役員の後継者が見つけにくい。
(2)については、
・転校して設置校の児童にならないと指導が受けられない。転校が子どもに隣近所からの孤立につながってしまうことを理解されない。
・籍を普通学級に置いてもらえず、ことばの教室へ移すことを承知しないと指導されない。
・研修もしていなく、教員自身も言障教育に興味・関心のない人が配置されていて、一日も早く普通学級担任に戻りたがっている。
・若い先生が言語障害児教育に定着しない。
・通級を制限する教育委員会がある。学校管理者や担当教員は黙ってその指示に従っている。
・通院の言語治療士は、学校と連絡とることなく一方的に指示してくる。学校も医療サイドと連絡を取ってくれない。
(3)については、各親の会同士の連携と情報交換を密にして、会運営を支援してほしい。そしてもっと社会や国に向かって、ことばやきこえにハンディをもった子どもたちの環境整備を積極的に働きかけよということでした。
特に、アンケートからもわかるように、「在籍」の問題が「通級制」とかかわって全国的に大きく広がっていることと、専門の教員養成の問題が重くのしかかっていることがわかります。
現実に文部省の調べでは、昭和59年をピーク一言語障害特殊学級及び就学児童生徒数がともに減少してきています。これは指導を受けるべき児童生徒数が減少したのでは決してなく、在籍が取りにくくなって減少してきているのです。実際にこのままでは援助を求める子どもたちが減らないのに、学級が減少し担当教員が配当されなくなっていくことを内外に問題提起しました。
平成元年になって4月10日突然悲しい知らせが入りました。東北の仙台市立通町小学校でいち早く言語障害教育に取り組まれ、言難教育の基礎をつくられた浜崎健治先生の訃報です。死の直前まで親の会のことを気にかけて下さったそうです
親の会会員はもとより関係者一同心からご冥福をお祈り申し上げます。
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